ファンからの寄稿文
「40周年に思う、佐野元春のこと」

佐野元春の太陽の詩

佐藤一伯

 40周年おめでとうございます。ファンからの寄稿文募集を企画していただき、ありがとうございます。

 この機会に、前から気になっていた、佐野さんが「太陽」について歌った詩を振り返ってみることにしました。

 1980年代に太陽を歌った作品は、アルバム『サムデイ』の中の「サンチャイルドは僕の友達」で、「こんなに素敵な一日の光を誰かの為に捧げるなんて」と、陽の光を奪われてしまうことに嫉妬するような印象です。『ノー・ダメージ』に収録された「モリソンは朝、空港で」の中の「おだやかな光に揺れるターミナル」、『カフェ・ボヘミア』に入っている「ヤングブラッズ」の「大地に果てしなく降るモーニングライト」という歌詞は、対象は漠然としていますが、これからの抱負や希望がこめられているように感じます。

 1990年代に入り、アルバム『タイム・アウト!』の「恋する男」では、「君はサンシャイン」、「空よりも高く」では「朝日の当たる家へ帰ろう...」と、「君」や「家」への思いを歌っています。『スウィート16』の「ミスター・アウトサイド」では「朝、目が覚めて光の中」、「誰かが君のドアを叩いている」では「太陽、溶けた空に高く、何もかもすべて焦がしておくれ」と、想像力がかきたてられる歌詞です。『サークル』の中の「君がいなければ」では「つかのまの陽ざしのなか、ホコリだらけの街を歩く」と歌っています。佐野さんの曲は全般的に夜や雨、曇り空の情景が多い印象ですが、それゆえでしょうか、「つかのまの陽ざし」を歌った曲に特別の温かみを感じます。

 アルバム『フルーツ』では、「水上バスに乗って」の中で「光に満ちた日の出桟橋」、「十代の潜水生活」で「太陽だけが僕のなかで動いてる」と歌い、「太陽だけが見えている - 子供たちは大丈夫」には「境界線がぼけてく、太陽だけが見えてる」の歌詞があります。心の中の太陽に焦点をあてているように思われます。『THE BARN』の中の「ドライブ」では、「サンサンとなびく光に、ほんの少しだけブルース」と歌っています。

 2000年代の『THE SUN』に収録された「希望」では「陽は昇り、陽は沈み」、「君の魂 大事な魂」では「そこに陽はまた昇り月がまた巡り」、「明日を生きよう」では「光が遠くの空で虹を作ってる」、「遠い声」では「木漏れ日の街、光の輪を包む」、「太陽」では「God、夢を見る力をもっと」と、これまでのアルバムの中で最も多く太陽が歌われています。曲は「恵みの雨」ですが、最後の「この毎日の人生…」というリリックは、アルバム全体のテーマになっており、これ以降の作品でも受け継がれているように感じています。アルバム『COYOTE』の「荒地の何処かで」では「眠たげな太陽、燃え尽きるまで」、「君が気高い孤独なら」では「通りは陽射しに満ちて暖かく」、「Us」では「君にとって夏の朝日のような」と歌っています。

 2010年代の『ZOOEY』に収められた「ラ・ヴィータ・エ・ベラ」では、「窓辺に広がる夏の海一面、静かな水面に光こぼれて」、『BLOOD MOON』の中の「私の太陽」では「きっと君は君のまま変わらない」、「東京スカイライン」では「橋から見下ろす街に汚れのない光」、2020年の「この道」では、「朝日に包まれて、今日がまた始まる」と歌っています。

 これらの歌詞の印象を、一言でまとめることは難しいですが、日常の中の希望や愛情を歌った詩が多いように思います。佐野さんの曲はすべて好きですが、これからも太陽ソングを楽しみにしたいです。

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