それは「アンジェリーナ」から始まった。女の子との初めてのドライブ。深夜に近い甲州街道を、車の窓を全開にして、カセットテープを大音量で鳴らしながらアクセルを思い切りふんづけた。車のリヤウィンドウには、大きく「Can't you hear my heart beat」とレタリングのステッカーを貼った。
そして「サムデイ」。空っぽになってしまった助手席に向けて、「Happiness and Rest 約束してくれた君 だからもう一度あきらめないで 真心がつかめるそのときまで『サムデイ』!」と絶叫した。
ありきたりだけどこんな風に大人になった。つまらない大人かどうかは分からないけど、一生懸命生きている。助手席に座る妻に、「君がいなければ この心 闇にさまようだけ」と心の中で歌いながら。