ファンからの寄稿文
「40周年に思う、佐野元春のこと」

エンターテインメントの先にある表現 〜天国が君をみつめている〜

吉見いずみ

 エンターテインメントの先にある表現 ── 歌番組のインタビューの中でおっしゃっていた一言が印象に残っています。

 このコロナ禍で、音楽、演劇、映画などの表現の場が揺らいでいますね。表現の場とは何でしょう。ひとと出会う場、自己と深く向き合う場、新しい価値観に触れる場、想いを共有する場、雑念が取り払われる場、枯渇したエネルギーを取り戻す場、安寧をもたらす場・・・。私にとっては、自分の生命の基礎を築く場といえるでしょう。

 「エンターテイメント!」というと何だかカジュアルに聞こえますが、その先にあるものは、表現なのですね。「別の視点・角度で見ることにより、闇を切り開き、前進する」と、たしかNEW AGEの曲について語るときにおっしゃっていました。ポップ・ソングは楽しげに踊りながら、闇を切り開く!のですね。単なる快楽ではないと。

 デビュー40周年、おめでとうございます。私が生まれた頃から、活動されていらっしゃったんですね。私は今年、40歳になりました。佐野さんの音楽を聴くようになってからは、まだ半年くらいです。

 「コーンフレークの憂鬱 ビタミン剤の退屈」・・・。 ── I like THIS! そう確信できる拠り所がなければ、息が詰まりそうな時代、遅ればせながらも佐野さんに出会えたことを心から嬉しく思っています。

 いつだか、「ソングライターは時代の一歩先を行って情景を描く」ともおっしゃっていました。今、どんな情景が見えていますか。たとえそこに闇があるのだとしても、「美しい経験」を積み重ねれば、乗り越えてゆけるでしょうか。

「天国が君をみつめている」、そう思いたい。
「どうか、まともでいさせてほしい」、本物のエンタテイメント!

 「プリンスのファンクが せつなく飢えた街の鼓動と同期する」ように、佐野さんのせつなくやさしいポエトリーは、テンポの狂いかけた私の鼓動を今日も正してくれています。

© 2021, Copyright M's Factory Music Publishers, Inc. , DaisyMusic, Sony Music Entertainment, Inc. All rights reserved.
Back to MWS