ファンからの寄稿文
「40周年に思う、佐野元春のこと」

元春の音楽のある世界と、自分の生きている世界

サリー

 元春の音楽に出会ったのは高校生の私。

 インターネットのない時代、田舎の高校生は音楽雑誌を発売日から数日遅れで手にして読みふけり、友達から借りたレコードにそーっと針を落とし、素敵な音楽を集めたカセットテープを作るのに夢中、サウンドストリートでクラスの男の子のカッコつけたメッセージが読まれて、翌日大騒ぎ。みんな元春の描く世界に憧れていた。高校生の私にはライブなんか夢のまた夢、元春のライブをみることなんてできないんじゃないかと思っていたけど。

 時は流れて30数年後の私。

 大人になった私は少々遠くても、そしてひとりでも元春のライブに行ける。2018年のMANIJUツアー、大阪フェスティバルホールの2階席。ひとり参加でライブを楽しんでインターミッションのひととき、隣の席の男性が話しかけてきた。「元春のライブにはよく来るんですか」「最近ですよ、高校生の時から好きだけど、最近は特にかっこいいなあと思って」 聞けば彼は出張で来ていて、その日にライブがあるのを知って久しぶりにチケットを取ったのだとか。後半開始までふたりで少しだけ話して、後半のライブを楽しんで終演。席を立つ男性に「楽しかったですね」というと「そうですね、また会いましょう。いつかどこかの元春のライブ会場で!」なんてかっこいい一言。彼も元春の描く世界に憧れてたひとりなんだと思った。

 会場を出た男性はあっという間に会社員の雰囲気をまとって駅方面へ去っていった。明日の彼の仕事がうまくいきますように。

 私の隣では女性が家に電話をかけ、介護をしているらしい家族の様子を聞いてすぐに帰るからねと言っている。

 私たちみんなに、元春の音楽のある世界と、自分の生きている世界がある。

 私たち、自分の生きている世界だけではきっと苦しかったと思う。

 元春、私たちに元春の音楽の世界を見せてくれてありがとう。

 心からの感謝をこめて、大好きです。

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