ファンからの寄稿文
「40周年に思う、佐野元春のこと」

ピンとこなかったアルバムが、グッと胸に刺さった日。

#1

 佐野元春を初めて聞いたのは中学二年、『ヤングブラッズ』が発売された時だった。その頃は親からお小遣いを貰う身で、お金なんかないから、雑居ビルの2階にあった貸しレコード屋でレコードを借りてきては、テープに落とし、毎日のように聴いていた。『カフェ・ボヘミア』『ハートランド』『ナポレオンフィシュと泳ぐ日』は予約して買った。もちろん古い作品も買い足した。本当にすばらしい作品ばかりだと心から思った。

 でもその後に発売された『タイムアウト』『スイート16』『サークル』は実はあまりピンとこなかった。今思えば遊ぶのに忙しかったからかもしれない。正直に言うが、これらのCDが棚の中で埃を被っていた時期もあった。佐野さんゴメンナサイ。

 でもこれらの作品を久々に聴き直してみようと『タイムアウト』をプレーヤーのトレイに乗せた時、始まった曲に、とても衝撃を受けたんだ。

 その曲の名は「ぼくは大人になった」

 説教くさい歌詞などなにもないこの曲に、僕は気付かされた。“もう子供じゃないんだぜ”と……。曲にやっと僕が追いついたんだ。多分26歳くらいだったんじゃないかな。

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